2014年12月22日

介護報酬引き下げは何のため?誰のため?

先だっての介護エージェントニュースでもお知らせしましたが、来年度の介護報酬が引き下げられる方針であることは、ほぼ確定ともいえる状況になりつつあります。

そもそも、介護報酬引き下げの論議の元になったのは、膨れ上がる一方の介護保険をはじめとする社会保障費を少しでも削減するため、ということ。あとひとつは、社会福祉法人が運営する特別養護老人ホーム(特養)の内部留保(施設の儲け)が、総額で2兆円規模、1施設あたりでも3億円を超える巨額なものになっているという理由でした。

この、特養における「儲けの額」が多すぎるということは、イコール「介護報酬が高すぎるからだ」と見られ、財務省の主張によって、特養の内部留保を一般企業と同等の2~3%まで落とすために、当初は介護報酬の6%の減額を厚生労働省に求めてきました。

しかし、この理屈で、介護報酬を一律で減額されてしまうと、NPO法人や一般企業が運営する訪問介護やショートステイ、認知症の方向けの在宅サービス、有料老人ホームなどが一斉にあおりを食らうかたちになってしまいます。また、社会福祉法人が運営する特養は、税金の面でも法人税や固定資産税などが免除されていることから、さらにその不公平感に対する不満は強まっています。

介護報酬引き下げの「現場」への影響は?ケアマネジャーの7割が引き下げに反対

介護関連メディア事業を手掛ける株式会社インターネットインフィニティー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:別宮 圭一)は、運営するウェブサイト「ケアマネジメント・オンライン」に登録する会員のケアマネジャーに対して、介護報酬の引き下げについてどのように考えているかのアンケートを実施し、その結果を公開しました。

回答を得たケアマネジャーのうち、財務省が提示した、介護報酬6%の引き下げについて「反対」「どちらかというと反対」を合わせると、全体の7割以上という結果でした。また、実際に介護報酬の引き下げがこの通りに行われた場合、ケアマネジャーとしての業務にどのような影響があるかという質問に対しては、「給与・賞与」に対する影響を懸念する声が最も多く、次いで「業務内容」「ケアプランの件数」に影響があるという回答が続きました。

また、介護報酬引き下げについて、ケアマネジャーから同アンケートに寄せられた意見には、

・介護に携わるスタッフたちの給与は、他業種の給与体系よりも低く抑えられている現状を考えると、介護報酬の引き下げは、労働条件を下げる方向に向かわせる気がします。

・報酬が下がれば下がるほど、さらに人材の確保ができなくなります。意欲が高い人財がこの業界を離れて、他で働けない人材のみがこの業界に留まります。やがてモラルの低下を招きます。引き下げを検討する前に、野放図に増える事業所数を制限するべきではないでしょうか?

と、介護報酬が引き下げられることで、さらなる人材難や労働条件の悪化を危惧する声があげられていました。

財務省とは少し主張が異なる厚生労働省が掲げる介護報酬引き下げの論拠

介護報酬引き下げに関しては、その落としどころとなる引き下げ額(率)について財務省と綱引きを行っている厚生労働省ですが、 19日に開かれた介護給付分科会において示された、これまでの審議内容のポイントを見ると、その中で提言されている介護報酬引き下げの要旨については、財務省が指摘しているポイントと少し趣が異なります。

介護報酬改定に関し、厚生労働省が強調しているのは、

(1)中重度の要介護者や認知症高齢者への対応の更なる強化
(2)介護人材確保対策の推進
(3)サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築

の3点。(1)については、来年から、要支援者に対する生活支援サービス(全国一律の介護予防訪問介護と介護予防通所介護)の管轄が国から市町村に委譲されることに伴い、より介護度の重い人や認知症の高齢者に対して、「住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるようにする」という「地域包括ケアシステム」の基本的な考え方を実現するための具体的な支援策として、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などを強化。また、「活動」と「参加」に焦点を当てたリハビリテーションを推進し、新たな報酬体系を導入するということ。

(2)についても、「地域包括ケアシステム」の構築のために、介護人材の確保は必要不可欠で、最重要課題であることを示し、そのために、介護報酬改定と合わせて、「新たな財政支援制度」を活用しつつ、介護に携わる人材の資質向上を前提とした上乗せ評価を行うための区分や、サービス提供体制強化加算の要件について、介護福祉士の配置割合が高い状況を評価するための区分を創設することで、介護事業者が人材の確保が推進される仕組みの構築を図ることが重要としています。

(3)に関しては、介護保険料と公費(国費)で支えられている介護保険制度そのものの持続可能性を高めるために、より効果的かつ効率的なサービス提供が必須であるとし、必要なサービス評価の体系化・適正化や規制緩和等を進めていくことが必要であるとしています。

財務省が拠り所とする特養の内部留保の額から導き出した介護報酬引き下げすべしという主張と比べると、厚生労働省は、2025年に向けた「地域包括ケアシステム」の構築のため、また介護保険制度自体の維持のために、新たな報酬形態を整備したうえで、「必要なところに必要な報酬」が行き渡る仕組みを作りたいという「思い」は感じられるものになっているようには思えます。

ただ、いずれにしても、介護報酬引き下げの方針に変わりはありません。これは、介護事業従事者だけでなく、介護保険サービスを利用する被保険者側にも大変大きな影響を及ぼします。果たして介護報酬の引き下げが、介護サービスを利用する人、介護の仕事に携わる人双方にとって「良いこと」になるのかどうか、何のための改定なのかについて、今一度問いかける必要がありそうです。

 

▼外部リンク

・「 特養の内部留保と介護報酬6%引下げ報道に対するケアマネジャーの意識調査」
http://www.caremanagement.jp/?action_enq_user=true&page=cmnr141216

・厚生労働省:平成27年度介護報酬改定に関する審議報告(案)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000069423.pdf

 

介護エージェント運営事務局