2018年06月06日

【若年性認知症】高齢者の認知症との違いは?特徴やおもな症状について

考える男性医師

認知症といえば高齢者が患うものというイメージがありますが、65歳未満の人でもなんらかの理由で認知症を発症する場合があります。

65歳未満の人が発症する認知症は総じて若年性認知症と呼ばれますが、ここでは若年性認知症のおもな症状や、高齢者の認知症との違いなどについて解説していきます。

若年性認知症の種類

認知症は病気の名前ではなく、進行性の症状をあらわす言葉です。認知症の原因の多くは脳の病気であり、たとえば高齢者に多く見られるアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)であれば、脳の神経細胞が減少し、脳が萎縮することによって発症します。

一方、若年性認知症においては、脳卒中(脳梗塞や脳出血)を原因とする脳血管性認知症がもっとも多いといわれています。厚生労働省では2006年度から2008年度の3年間にわたり、若年性認知症の実態を把握するための調査をおこなっていますが、同調査では若年性認知症の約4割(39.8%)が脳血管性認知症であり、次いで多いのがアルツハイマー型認知症(25.4%)であることが報告されています。なお高齢者のなかには、アルツハイマー型と脳血管型の2つの認知症を併発している人も見られますが、こうした混合型の人をあわせると、アルツハイマー型と脳血管型で認知症全体の8割から9割を占めるともいわれています。

また上記の2つ以外で若年性認知症の原因として比較的多いのは、頭へのケガの後遺症として起こる頭部外傷型認知症(7.7%)です。ほかにも認知症の原因としては、脳の前方部分(前頭葉や側頭葉)が萎縮することによって起こる前頭側頭型認知症(前頭側頭変性症)、脳の中に「レビー小体」というタンパクが蓄積することによって起こるレビー小体型認知症などがありますが、これらはいずれも若年性認知症全体から見ると3~4%と少数となっています。さらに若年性認知症においては、アルコールを多量に摂取しつづけることによって起こるアルコール性認知症が、上記の認知症と同程度(3.5%)見られることも上記の調査では報告されています。

若年性認知症の症状と高齢者の認知症との違い

本とりんご

若年性認知症の最大の特徴はいうまでもなく「発症する年齢が若いこと」です。

上記の厚生労働省の調査では、若年性認知症の発症年齢が平均51.3歳程度ということが判明していますが、高齢者の認知症では女性の割合が多いのに対して、若年性認知症は人口10万人あたりの患者数が男性57.8人・女性36.7人と男性に多いことも報告されています。

また若年性のアルツハイマー型認知症の場合は、高齢者に比べて進行が速く、認知機能の低下による症状が早い段階からまとめてあらわれてくることが多いのも特徴です。しかし高齢者の場合とは違い、若年性認知症については「物忘れ」や「これまでできていたことができなくなる」といった症状があらわれても、ストレスや疲れのせいと判断し、認知症を疑わない人が多いのも実情です。そのため若年性認知症の場合は、症状がかなり悪化してから医療機関を受診する人が多いといわれています。

なお、認知症には「不安」や「抑うつ」といったうつ病と共通する症状が見られるケースも多いため、特に若年性認知症の場合は、うつ病という誤診を避けるためにも専門医による適正な診断が必要といえます。

若年性認知症の患者が直面する問題とは

高齢者の認知症とは違い、若年性認知症は働き盛りの年齢で発症するケースが多いため、認知症が原因で退職や休職を余儀なくされると、収入や家計に大きな影響が出ることになります。実際に上記の厚労省の調査では、若年性認知症の患者の介護をおこなう家族の7割が、認知症の発症後に「収入が減った」と回答しています。

また、認知症高齢者の介護が配偶者や子どもなど複数の身内によっておこなわれることが多いのに対し、若年性認知症の場合は配偶者に介護の負担が集中しがちです。上記の調査では介護をおこなう家族の約6割が「抑うつ状態にある」と判断されたことも判明していますが、なかには若年性認知症の患者のほかにも介護が必要な高齢者が家族にいるというケースもあり、こうした場合は配偶者に複数の介護負担がかかる可能性もあります。逆に患者に配偶者がいない場合には、老親が子どもの介護を担うというケースもありますが、このように家族への介護負担が大きい点も若年性認知症の特徴といえるでしょう。

若年性認知症のおもな症状

万年筆を持つ手元

認知症の症状については、程度やあらわれる時期などに違いはあるものの、高齢者の認知症と若年性認知症のあいだに大きな違いはありません。認知症の症状は下記の中核症状と呼ばれる基本的な症状と、行動・心理症状と呼ばれる二次的な症状から成り立っています。

中核症状…脳の障害によって直接的に引き起こされる症状であり、認知症になれば誰にでもあらわれる可能性のある症状。おもな症状には、もの忘れや直前に起きたことが思い出せなくなるといった「記憶障害」、時間や場所がわからなくなる「見当識障害」、判断力・問題解決能力・計画的に物事を実行する能力の低下、ボタンをはめるなどの作業ができなくなる「失行」、道具の使い道などがわからなくなる「失認」、物や人の名前がわからなくなる「失語」などがある。

行動・心理症状(BPSD)…周囲の人との関わりや環境、心理的な要因によって二次的にあらわれる症状。おもな症状は、家の中や外を歩きまわる「徘徊」、不安や抑うつ、幻覚や妄想、睡眠障害など。また人によっては「怒りっぽくなる」「キレやすくなる」といった性格の変化がみられる場合もある。このようにあらわれ方に大きな個人差があるのがBPSDであり、認知症であってもこうした症状がまったくあらわれない人もいる。

ちなみに上記の厚労省の調査では、若年性認知症の「最初に気づかれた症状」としてもっとも多いのが「もの忘れ」であることが報告されています(全体の50%)。以降、若年性認知症の基本的な症状としては、多く見られた順に「行動の変化」(28.0%)、「性格の変化」(12.0%)、「言語障害」(10.0%)などがあげられますが、若年性認知症の場合は周囲の人が「本人の変化にいかに気づくか」が早期発見の大きなポイントといえるかもしれません。

若年性認知症のチェックポイントは

上にも述べたように、若年性認知症には「本人や周囲の人が認知症と気づきにくい」という特徴がありますが、若年性認知症に対する支援や研究をおこなっている認知症介護研究・研修大府センターでは、下記のような変化を若年性認知症の具体的なチェックポイントとしてあげています。

・おなじことを何度も聞く
・伝言したことがうまく伝わらない
・電車・バスで乗る駅や降りる駅がわからない
・よく知っている道なのに迷う
・通帳、印鑑、財布などをよく失くす(家族が盗ったという)
・家電製品の使い方がわからなくなった
・鍋を焦がす、ガスの火を消し忘れる、水道の水を出しっぱなしにする
…など

たとえ高齢者でなくても、日常生活においてこうした変化が頻繁に見られるようであれば、若年性認知症の疑いがあるかもしれません。同センターでは若年性認知症のさらに詳しいチェックポイントをホームページ上で公開しているほか、若年性認知症に関する電話での無料相談もおこなっています。詳しくは下記のサイトをご参照ください。

・若年性認知症について知る もしかして若年性認知症?
社会福祉法人仁至会 認知症介護研究・研修大府センター
http://y-ninchisyotel.net/about/moshikashite.html

若年性認知症の早期発見は、早い段階で治療がおこなえるだけでなく、症状の程度によっては障害者手帳障害年金の申請など、生活上の支援を受けるうえでも重要となります。

・若年性認知症 生活を支える 医療・障害手帳・年金
社会福祉法人仁至会 認知症介護研究・研修大府センター
http://y-ninchisyotel.net/support/fukushi.html

なお近年では、認知症の専門医が配置された認知症疾患医療センターや、日本認知症学会が認定する認知症専門医も全国に増えています。もしも、本人や家族に若年性認知症の疑いがあり、日常生活や仕事に支障が出ているような場合には、こうした医療機関を早期に受診することが必要といえるでしょう。

・全国の認知症疾患医療センター一覧 一般社団法人認知症予防協会
http://www.ninchi-k.com/?page_id=34
・全国の認知症専門医(日本認知症学会認定専門医)リスト
http://dementia.umin.jp/g1.html

▼参考資料
・若年性認知症とは 社会福祉法人 仁至会 認知症介護研究・研修大府センター
http://y-ninchisyotel.net/about/about.html

・若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0319-2.html

・若年性認知症、症状に応じ就労や生活相談 日本経済新聞
https://style.nikkei.com/article/DGXKZO19099420R20C17A7TCC001?channel=DF140920160921

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