2018年05月02日

ターミナルケアの内容や目的は…病院・施設・在宅における終末期の看取りについて

四つ葉のクローバーと病院

近年、本人が望まない延命治療を中止し、自然に患者を看取るターミナルケアに注目が集まっています。

医療や介護の現場で使われるターミナルという言葉には「終末期」という意味があり、「終末期医療」「終末期看護」とも訳されるターミナルケアには、患者の「最期のとき(=終末期、ターミナル期)」に施されるケアという意味合いがあります。

ターミナルケアとは

ターミナルケアでは、余命が残り少ないと診断された患者の精神的苦痛や身体的苦痛、死への恐怖などをやわらげ、場合によっては患者の家族に対する精神的ケアなどもおこないます。またターミナルケアと通常の医療行為や看護の大きな違いは、治療や延命よりも、患者のQOL(Quality of Life:「生活の質」とも訳される、日常生活の充実度や幸福度をあらわす指標)の維持・向上に重点を置いている点にあります。

一方、ターミナルケアとよく似た言葉に緩和ケアがありますが、どちらも心身の苦痛を緩和し、QOLを向上させることを目的としている点は共通しているものの、緩和ケアは病気の進行度に関係なく患者の苦痛を取り除くものであり、終末期以外の患者も対象となる点が大きな違いといえます。また、国内でおこなわれる緩和ケアはおもにがん患者を対象としていますが、ターミナルケアは特定の病気の患者を対象とするものではありません。ターミナルケアは終末期の患者に対して心身の苦痛を緩和・軽減する緩和ケアの一種であり、患者の残された日々を充実させることを目的としておこなわれるケアともいえるでしょう。

終末期(ターミナル期)はどのように判断される?

ターミナルケアが開始される時期については、病気の種類や患者の健康状態によって余命が診断される時期が大きく異なることから、明確な定義はおこなわれていないのが実情です。たとえば高齢者の場合、寝たきりになり口から物が食べられなくなった状態を終末期と判断するケースが多くみられますが、こうした状態から回復する高齢者もめずらしくありません。そのため、治療やリハビリを中止してターミナルケアに切り替える時期の判断には十分な慎重さが必要とされます。

ちなみに、公益社団法人 全日本病院協会では「複数の医師が客観的な情報をもとに治療による回復が期待できないと判断」し、「患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師などの関係者が判断に納得」して、「死を予測した対応を考える」時期を終末期と定義しています。

ターミナルケアの内容は?

ハートを持つ医師

ターミナルケアの中心となるのは患者の心身の苦痛を緩和するための医療行為や看護であり、たとえば身体面での苦痛を軽減するためのケアとしては、医師の判断のもとにおこなわれる鎮痛剤の投薬や、身体を清潔に保つための入浴(またはシャワー浴、清拭)、寝たきりの人が楽な姿勢を保持するための介助などがあげられます。

また精神面での不安や苦痛をやわらげるものとしては、カウンセリングや職員による聞き取り、声かけといったコミュニケーションによるケアのほか、居室(病室)に患者の好きな物を持ち込んだり、好きな音楽をかけたりして、患者が快適に過ごせる環境を整えるケアなどがあげられますが、カウンセリングなどによる精神面でのケアは、患者本人だけでなく、患者の家族に対しておこなわれる場合もあります。

さらにターミナルケアにおいては、点滴などによる栄養・水分の補給もおこなわれますが、自力で食事ができない人や、口から物を食べられない人の場合、胃や腸にチューブで直接栄養を送り込む「胃ろう」「腸ろう」といった経管栄養や、血管に直接栄養を注入する経静脈栄養がおこなわれる場合もあります。しかし、こうした処置が延命治療となる場合もあることから、処置の有無については医師の判断だけでなく、本人や家族の意思も尊重されることになります。

ターミナルケアがおこなわれる場所は?

ターミナルケアという言葉が「終末期医療」「終末期看護」と訳されることからもわかるように、ターミナルケアは基本的に病院などの医療機関でおこなわれるものといえます。しかし、2006年に介護報酬(介護サービスを提供する事業者に支払われるサービス料)に看取り介護加算が導入されたことなどにより、近年では施設におけるターミナルケアともいえる看取り介護をおこなう老人ホームも増えてきています。

ちなみに、ターミナルケアが病院などの医療機関でおこなわれる医療行為や看護を中心としたケアであるのに対して、看取り介護は介護施設における介護や生活支援を中心としたケアということができますが、実際はいずれのケアも医療・看護・介護の連携においておこなわれており、両者の言葉は混合して使用されているのが現状といえます。

また近年では、24時間体制のターミナルケアに対応している医療機関や訪問看護ステーションも増えてきており、在宅でのターミナルケアがおこないやすい環境も整備されつつあるといえます。こうした在宅でのターミナルケアは、本人や家族の希望によっておこなわれる場合もありますが、余命が残り少ないと診断された患者においては、医師が帰宅を勧めるケースもあります。在宅でターミナルケアをおこなう場合、訪問診療や訪問介護、訪問介護といったサービスを利用することになりますが、公的な医療保険の対象となる訪問診療でも、診療の内容や自己負担の割合(75歳以上の後期高齢者の場合は1割または3割)によってかかる費用は異なります。これは、医療保険による訪問看護を利用した場合も同様です。

さらに在宅でのターミナルケアでは、患者が生活できる環境を整えるため、手すりやスロープ、ポータブルトイレなどの福祉用具を用意しなければならない場合もありますが、介護保険による訪問看護・訪問介護のサービスや、福祉用具のレンタル・購入などについては、要介護度によって保険が適用される範囲(保険内で利用できるサービスの量)が異なります。

また、たとえ公的な医療保険や介護保険によるサービスであっても、利用が多かったり、長時間にわたったりする場合、費用が高額になってしまうケースもあるため注意が必要です。そのため、在宅でターミナルケアをおこなう際には、費用や家族の心身の負担を十分に考慮し、主治医や病院の医療ソーシャルワーカー(※)ケアマネジャー(介護支援専門員)などと相談しながらプランを立てることが重要となります。

※医療ソーシャルワーカー…病院に配置された、患者やその家族の社会的・心理的・経済的な問題を解決することを援助する専門職。

それぞれのメリット・デメリットを知ることも大切

手を取り合う

ターミナルケアにおいては、本人の「どこで人生の最期を迎えたいか」という意思をできるだけ尊重することが重要となります。政府が2012年に、全国の55歳以上の男女を対象として実施した「高齢者の健康に関する意識調査」では、半数以上(54.6%)の人が「自宅で最期を迎えたい」と回答していますが、在宅でのターミナルケアや看取りには家族の負担などまだまだ難しい面もあり、2013年の時点では7割以上の人が病院で亡くなっているという報告もおこなわれています(2013年の人口動態調査より)。

一方、現在は病院・施設・在宅と、ターミナルケアを受ける場所に3つの選択肢がある状況といえますが、こうしたなかで重要となるのは、それぞれの特色を本人や家族が理解しておくことです。たとえば病院でのターミナルケアは、医師や看護師が24時間在駐していて安心な反面、生活の場としての温もりに欠けると感じる高齢者もいるかもしれません。

また、看取り介護を実施している老人ホームの場合は、住み慣れた居室で、顔見知りの職員や入居者に見守られながら過ごせるというメリットがある一方で、医療行為や医療的ケアについては、医師が常駐していないことなどから、ほとんどの場合、病院のような迅速な対応は期待できないのも実情です。しかし、こうした老人ホームのなかには、あらかじめ本人や家族の意思を確認したうえで、あえて延命のための治療や医療的な処置をおこなわず、介護職員や看護職員による自然な看取りをおこなうという方針の施設もあります。さらに自宅でのターミナルケアには、家族がずっと付き添っていられるというメリットがある一方で、介護や見守りをおこなう家族の心身の負担が大きくなってしまうというデメリットもあります。

ターミナルケアについては、こうしたメリット・デメリットや費用、本人の希望や家族の負担を考えた上で、「最期を迎える場所」を選ぶことが大切といえますが、老人ホームへの入居を考える際にも、ターミナルケアや看取り介護を視野に入れて施設を選ぶことが重要となります。また、終末期を迎えた高齢者にとっては、家族がそばにいるだけで心が安らぎ、ケアとなるケースも多いことから、手を握る、名前を呼ぶ、やさしく体をさするなどのコミュニケーションを家族がおこなうことも、身近な看取り介護のひとつといえるでしょう。

▼参考資料
・緩和ケアは「がんの治療」と一緒に始めます 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会
http://www.kanwacare.net/kanwacare/point02.php

・終末期医療に関するガイドライン 公益社団法人 全日本病院協会
https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/161122_1.pdf

・看取り介護指針・説明支援ツール 公益社団法人 全国老人福祉施設協議会
http://www.roushikyo.or.jp/contents/research/other/detail/224

・在宅ターミナルケア 公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団
http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/main/jissai1.html

・在宅医療にかかるお金 一般社団法人 全国在宅療養支援診療所連絡会
http://www.zaitakuiryo.or.jp/zaitaku/money.html

・高齢者の健康に関する意識調査 内閣府(P8「最後を迎えたい場所」)
http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h24/sougou/gaiyo/pdf/kekka_1.pdf

・在宅医療に係る背景~自宅での死亡の状況など~ 内閣府
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg4/kenko/151224/item2-2-2.pdf

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