2018年04月04日

【老人ホーム入居の際に必要な身元引受人・保証人とは】頼れる人がいない場合はどうすればいい?

色鉛筆

現在、多くの老人ホームでは、入居時に身元引受人(保証人)を立てることが条件とされています。

こうした場合、施設に入居する人の家族が身元引受人になるのが一般的とされていますが、国内には高齢者人口の増加に伴い、「頼れる家族や親族がいない」という高齢者が増えている現状もあります。また、老後に頼れる人がいなくなるおもな理由としては、未婚や子どもがいない状態での配偶者との死別、離婚などがあげられますが、近年ではこのように家族や親族がおらず、身元引受人を立てられない高齢者が老人ホームへの入居を断られてしまうケースも多く見られます。

老人ホームにおける身元引受人の役割とは

高齢者においては、施設に入居している間に認知症などが進行し、入居者の判断能力が低下するケースも多く見られます。また、病態の悪化などにより、介護や治療に必要なさまざまな手続きを本人がおこなえなくなる場合もあります。身元引受人とは、こうした際に入居者の立場で施設と話し合い、入居者の代わりにさまざまな判断や手続きをおこなう人といえます。

さらに老人ホームなどの介護施設においては、身元引受人は入居者がなんらかの事情で月々の費用を支払えなくなった場合に、本人に代わって支払いをおこなう連帯保証人を兼ねているケースも多く見られます。また入居者が亡くなった際には、身元引受人が入居者の身柄を引き取るほか、精算などの退去時の手続きや荷物の引き取りなどもおこないます。

「成年後見人」と「身元引受人」の違いとは

指さしする女性

一方、認知症などで判断能力の衰えた高齢者に対して、手続きや契約などを代行する権限を持つのが成年後見人です。

法律による成年後見制度には、家庭裁判所が成年後見人(あるいは保佐人・補助人)を選ぶ法定後見制度と、判断能力が衰える前に本人があらかじめ代理人(任意後見人)を決めておく任意後見制度があります。成年後見人は、本人の親族や法律・福祉の専門家などさまざまな人の中から選ばれます。

なお、成年後見人は本人に代わって老人ホームの入居契約などをおこなうことはできますが、身元引受人や保証人になることはできません。これは成年後見人の職務範囲が、本人の財産を管理することと身上を監護することに限られていることによるものですが、施設によっては後見人がいることで身元引受人が不要となる場合もあり、こうした施設では入居の交渉を後見人がおこなうケースもあります。

ちなみに、ここでいう身上監護とは、被後見人(後見を受ける人)が適切に生活できるように、介護や医療、生活などに関する契約や手続きをおこなうことを指します。たとえば、被後見人に介護や治療が必要になった際、成年後見人は介護施設や医療機関を探したり、入院や入居の手続きをおこなったりすることはできますが、自ら介護をおこなうことは後見人の仕事ではありません。また、被後見人が施設への支払いを滞納した場合についても、後見人は入居者の財産から滞納している費用を支払うことはできますが、自分が費用を立て替える義務はありません。なお、成年後見制度の詳細や成年後見人に支払う費用の目安については、下記をご参照ください。

▼参考資料
・成年後見制度~成年後見登記制度~ 法務省
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html#a10

・成年後見人等の報酬額のめやす 東京家庭裁判所
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/130131seinenkoukennintounohoshugakunomeyasu.pdf

身元引受人が見つからない場合はどうすればいい?

上記の成年後見制度の利用は、身元引受人が見つからない高齢者が介護施設に入居する方法のひとつといえますが、近年では「身元引受人不要」「身元引受人については応相談」といった条件を提示している介護施設も出てきています。こうした施設では、身元引受人を立てられない入居希望者に対して、保証サービス事業者や法律事務所などを紹介し、保証の代行をおこなったり成年後見制度の手続きを勧めたりすることにより、入居を可能とするケースが多いようです。

さらに、近年ではこのように身元引受人がいない高齢者に対して保証の代行をおこなう事業者も増えてきています。保証サービス事業者の形態は、社団・財団・NPO・株式会社などさまざまですが、多くの事業者が法律や介護・福祉の専門家などと連携し、老人ホーム入居時の身元保証から入居中の財産管理、退去時の身柄引き取りまで、身元引受人のいない高齢者のさまざまなニーズに応えるサポートをおこなっています。また民間事業者による保証サービスでは、初期に支払った預託金や基本料金から契約者に何かあった際の費用が支払われるのが一般的ですが、初期費用のほかに月会費が必要なケースなどもあり、事業者やサービス内容によって、トータルでかかる費用は大きく異なります。

なお、こうした保証サービスにはいまのところ届出などの義務がないため、事業者の質や信頼性がわかりにくいという実情もあり、実際に2016年4月には業界大手の公益財団法人「日本ライフ協会」が、会員から預かった預託金を職員の給与などに流用した挙句に破産する事件も起きています。そのため保証サービス事業者を選ぶ際には、できればケアマネジャー(介護支援専門員)など信頼できる第三者とともに、「どんなサービスが必要なのか」「事業者は信頼できるか」といった点に注意して、慎重に検討をおこなうことも大切といえるでしょう。

「頼れる人がいない」とあきらめる前に専門機関に相談を

話し合う

公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポートが2014年におこなった調査では、調査対象となった全国の病院や介護施設(特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、介護老人保健施設など)の約9割が、入居契約書や利用約款で身元引受人や保証人といった身元保証人を求めていることが報告されています。また同調査では、入居時に身元保証人を求めている介護施設の約3割(30.7%)が、身元保証人がいない場合は「入居を認めない」と回答していました。

一方、このように身元保証人がいないことを理由に高齢者が介護施設への入居を断られるケースが多発している状況を受け、 2016年3月には、厚生労働省が各自治体を通じて、介護施設が「正当な理由がないのにサービス提供を拒否しないように」指導を強化する方針を示したことも報じられました。

国が定める介護施設の運営基準には、「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」という規定があり、「身元保証人がいない」という理由だけで老人ホームなどの介護施設が高齢者の入居を拒むことはできないとされています。しかし、いまのところ高齢者に対する公的な保証サポートをおこなっているのは一部の自治体などに限られており、身元引受人のいない高齢者が介護施設に入居するためには、なんらかの形で成年後見制度を利用していく方法がもっとも一般的なのが実情といえます。

また都道府県や市区町村に設けられた社会福祉協議会では、高齢者に対して、成年後見制度の利用や各種手続き、金銭管理などについての無料相談をおこなっています。社会福祉協議会がおこなっている相談以外のサービス(金銭管理や手続き・契約のサポートを含む高齢者の日常生活自立支援)の利用料金は実施主体によって異なるものの、訪問サービス1回あたりの平均額は1200円程度となっており、民間の事業者よりも安価にサービスを受けられるのも特徴です。

東京・足立区など一部の社会福祉協議会では、高齢者の施設入居時や入院時における身元保証サポートもおこなっているとのことですが、今後さらなる高齢化の進展が予測されている現在においては、自治体や公的機関によるこうした身元保証サービスの整備や普及も大きな課題といえるかもしれません。

▼参考資料
・有料老人ホームQ&A 公益社団法人 全国有料老人ホーム協会
http://www.yurokyo.or.jp/checkpoint/homefaq.html

・おひとりさまピンチ! 身元保証人がいない NHKクローズアップ現代
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3810/1.html

・病院・施設等における身元保証等に関する実態調査 公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート
https://www.legal-support.or.jp/akamon_regal_support/static/page/main/newstopics/mimotohoshohoukoku.pdf

・介護施設 「保証人なし」で入所拒否できぬ 厚労省、指導へ 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20160306/ddm/002/010/071000c

・おひとりさまの老後は「家族不在」 欠かせぬ保証人 日本経済新聞
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO93348650Y5A021C1000000?channel=DF280120166590

・日常生活自立支援事業パンフレット 社会福祉法人 全国社会福祉協議会
http://www.shakyo.or.jp/news/kako/materials/100517/nshien_1.pdf

・高齢者あんしん生活支援事業 社会福祉法人 東京都足立区社会福祉協議会
https://adachi.syakyo.com/service/kenri/anshin-seikatsu/

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