2018年03月22日

【老人ホームに関する相談や苦情はどこへ言えばいいの?】契約時~入居後~退去時に多いトラブルとは

説明する女性

老人ホームへの入居は、そこで終生を過ごすことになるかもしれない利用者やその家族にとって、大きな決断を必要とする出来事といえます。

それだけに、消費者向けの相談センターなどには、契約や入居後の生活、解約などについての相談や苦情も多く寄せられています。ここでは老人ホームの契約や入居、退去に関するトラブルの事例と注意点、困った場合の相談先などについて解説していきます。

入居前~契約時に確認しておきたいことは?

老人ホームに入居してからトラブルが起こるのを防ぐためには、入居前に料金システム施設の設備サービス内容などについてしっかりと確認しておくことが重要となります。しかし、入居時に利用者に配布される重要事項説明書契約書の内容は多岐にわたるため、その複雑さから十分な説明や確認がおこなわれないままに契約がおこなわれるケースがあるのも実情です。

ちなみに全国の消費生活センターの相談員などで構成される公益社団法人 全国消費生活相談員協会では、2015年に「老人ホーム関連トラブル110番」という電話相談を実施していますが、そこには、

・月々の利用料が当初説明された費用よりも高額だった
・入居してから、事前に説明されなかった費用がかかることがわかった

といった相談が寄せられており、受け付けた苦情の7割以上(76.2%)が契約・解約にまつわるものだったことも報告されています。

有料老人ホームで月々にかかるおもな費用としては、家賃や管理費、食費や水道光熱費、介護サービス費などがあげられますが、上記のケースでは、それにプラスして、居室清掃料・食事の配膳料・健康相談費用といったサービス料や、任意参加の施設の行事(食事会や観劇会など)への参加費などを請求されたことが、施設側の「説明不足」という苦情につながっています。

有料老人ホームの場合、こうした基本的な料金にプラスされるさまざまな費用が施設によって大きく異なるケースもあるため、契約前に月々にかかる費用のすべて月額費用の内訳を詳しく確認しておくことが重要となります。またその際には、こうした費用について施設側から書面を提示してもらったり、メモを取ったりするなどして、後で繰り返し確認できるようにしておくことも大切といえるでしょう。

契約前に解約・退去時の条件についても確認を

チェックリスト

また、老人ホームの契約をおこなう際には解約・退去時の条件についてもしっかりと確認しておく必要があります。一般に、老人ホームに入居する人の多くは、施設を長期間にわたって利用することを想定して契約をおこないますが、「健康状態の変化」「他の入居者とのトラブル」「施設のサービスが合わない」などさまざまな理由によって、入居後に早々に解約をおこない、施設を退去することになるケースも決して少なくありません。

ちなみに多くの有料老人ホームでは、入居時に家賃を前払いする入居一時金方式を採用していますが、解約時にはこの入居一時金の返還をめぐるトラブルも多く発生しています。入居一時金は、平均的に何年ぐらいその施設に居住するかを算定し、その期間の家賃を前払いするものであり、施設に長く住むほど最初に支払った金額は徐々に差し引かれて償却されていきます。退去時に入居一時金が完全に償却されていなければ、入居一時金の残額は利用者に返金されることになりますが、多くの施設が初期償却といって、入居時に一定の割合の金額(15%~40%程度)を償却するシステムを採用していることもあり、「手元に戻ってきた金額が予想よりも少ない」という苦情を訴える人が多いのも実情なのです。こうした入居一時金の返還に関するトラブルを防ぐためには、契約時に施設における初期償却の割合解約時の一時金の返還システムについて、しっかりと確認して理解しておく必要があります。

また施設を退去する際には、部屋のクリーニング代原状回復のための費用日割りの利用料などが、入居一時金の残金から差し引かれるケースが一般的ですが、すでに入居一時金が償却されている場合や入居一時金のない施設では、こうした費用が利用者にあらためて請求されることになります。上記の「老人ホーム関連トラブル110番」には、「施設の退去後に原状回復のための改修費として施設から48万円の請求書が届いた(このケースでは施設が半額を負担)」という相談も寄せられていますが、「退去後に予想外の費用を請求された」といったトラブルを避けるためには、施設に入居する前に、退去時にかかる費用の具体的な内容や金額について施設側に確認しておくことが大切です。

ほかにも入居一時金や敷金、家賃をめぐっては事業者の経営不振を理由として「敷金や一時金の返還が遅れた」「家賃が突然値上げされた」といったトラブルも報告されていますが、こうした事例を防ぐ意味では、入居者が施設や事業者の経営状態についての情報収集を事前におこなうことの重要性が指摘されています。

入居後のトラブルについて

一方、老人ホームへの入居後に多く見られる相談や苦情としては、施設のサービス内容や対応に関するものがあげられます。たとえば、独立行政法人 国民生活センターや上記の相談ダイヤルでは、次のような相談の事例が報告されています。

・サービスの質が低下した
・受ける予定のサービスがおこなわれていなかった
・入居者が施設で怪我をしたが放置されていた
・職員の対応が悪い
・家族が自由に入居者に面会できない

ほかにも老人ホームへの入居後に多い苦情としては、施設の清掃状態など安全・衛生面に関するものがあげられますが、こうした問題については、まずは担当のケアマネジャー(介護支援専門員)や、各ホームの施設長に相談するのが一般的です。また多くの老人ホームでは利用者からの相談や苦情に対応する窓口を設置しており、契約時に入居者に配布される重要事項説明書には、こうした相談窓口の電話番号が記載されています。

なお、施設の相談窓口や担当者に苦情を申し立てても状況が改善しないときには、市町村など外部の窓口に相談することが、問題解決につながる場合もあります。有料老人ホームに関する外部の相談先としては、市町村の高齢者福祉に関する相談窓口、都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)、公益社団法人 全国有料老人ホーム協会などがあげられますが、こうした外部の相談窓口についても、通常は各施設の重要事項説明書に記載されています。また、こうした外部の相談窓口の記載がない場合には、まずは市町村の高齢者福祉や介護保険を扱う部署に相談してみましょう。

施設についての情報を十分に収集してから契約を

虫めがね

老人ホームに入居してからのトラブルを防ぐためには、事前にサービス内容や職員体制などを確認しておき、その施設が入居者の状態と合っているかどうかをしっかり確かめておくことが重要となります。たとえば上記の相談ダイヤルでは、入居後に認知症による徘徊が発覚したために施設の入居条件と合わなくなり、退去を求められた例なども報告されています。また入居一時金や月々の利用料については、わからないことや疑問を放置せず、システムについてきちんと理解ができるまで確認しておくことが、後々のトラブルを防ぐ上で重要となります。

なお、苦情を申し立てる際には、「現在、どのようなことが問題となっているのか」という点を事前に明確にしておき、相談先にはできるだけ事実を具体的に伝えるように心がけましょう。一方、施設の経営状態の悪化虐待が疑われるなど緊急性のある場合には、すみやかに市町村の相談窓口など信頼性のある外部の団体に通報することが必要なケースもあります。

老人ホームにおけるトラブルが深刻な事態に発展するのを防ぐためには、利用者や家族だけで問題を抱えこまず、状況に応じて外部の専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることも大切といえるでしょう。

▼参考資料
・老人ホーム関連トラブル110番 報告書 公益社団法人 全国消費生活相談員協会
http://www.zenso.or.jp/wp-content/uploads/%E8%80%81%E4%BA%BA%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0110%E7%95%AA%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8.pdf

・有料老人ホーム(各種相談の件数や動向) 独立行政法人 国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/roujinhome.html

・入居者・家族からの相談・苦情にみる有料老人ホーム事業運営ワンポイント 公益社団法人 全国有料老人ホーム協会
http://www.yurokyo.or.jp/about/onepoint.html

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