2018年02月07日

【老人ホームの看取り介護】介護施設におけるサービスの内容や範囲は?

ハートを持つ手

近年、高齢化の進展に伴い、介護施設における看取り介護が社会問題として新聞などに取り上げられる機会も増えてきました。

看取りという言葉には、「病人のそばにいて世話をする」「病人の死期まで見守り看病する」といった意味がありますが、ここでは介護施設における看取り介護の内容やサービスの範囲などについて解説していきます。

介護保険における看取り介護の仕組み

現代においては自宅で亡くなる人が減少し、かわりに病院や介護施設で最期を迎える人の割合が増加しています。内閣府の資料によると、2005年の時点では国民の約8割(79.8%)が病院で亡くなっており、自宅で亡くなる人は12.2%、老人ホームで最期を迎える人は2.1%、介護老人保健施設(老健)で亡くなる人は全体の0.7%でした。

これが2013年になると、老人ホームで亡くなる人は5.3%、老健で亡くなる人は1.9%と、いずれも2005年の約2.5倍に増加しています。こうした傾向を反映するように、2006年には介護報酬看取り介護加算が創設され、その後も数度にわたって加算の点数を増やすなどの要件の見直しがおこなわれています。

介護報酬とは、介護サービスを提供する事業者に対して介護保険から支払われるサービスの利用料をあらわす言葉ですが、その基準は金額ではなく単位で定められています。ちなみに介護報酬単位の基本額は「1単位=10円」ですが、地域やサービスの内容によって、1単位あたりの金額はプラス0円~1.5円程度の範囲で変動します。

一方、介護報酬における加算は、介護施設が特定のサービスを提供した際や、定められた基準をクリアした場合などにサービス利用料にプラスして支払われる報酬を指します。看取り介護加算を含む介護報酬への加算は、介護保険の施設サービスである特養や老健だけでなく、介護保険による特定施設入居者生活介護(※)のサービスを提供する介護付き有料老人ホームなどにも適用されます。2015年4月におこなわれた介護報酬の改定を例にとると、厚生労働省が定める基準に適合した特別養護老人ホーム(特養)や条件を満たした介護付き有料老人ホームが、おなじく同省が定める基準に適合した入居者の看取り介護をおこなった際には、下記の介護報酬が加算されることが定められています。

・死亡日以前4日以上30日以下の看取り介護…1日につき144単位
・死亡日の前日および前々日の看取り介護…1日につき680単位
・死亡日の看取り介護…1日につき1280単位

看取り介護加算は、医学的に回復の見込みがないと診断された施設の入居者に対して、医師や看護職員、介護職員などが連携して、入居者が「その人らしく生き、その人らしい最期が迎えられるよう」支援することをおもな目的として創設されたものであり、厚生労働省が2015年におこなった調査では、特養の76.1%、老健の64%、介護療養型医療施設(介護型療養病床)の81.9%がなんらかの形で看取り介護をおこなっていることも報告されています。

※特定施設入居者生活介護…施設への入居者に対して食事や入浴、トイレ介助などの生活支援や介護をおこなう介護保険のサービス。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅がこうしたサービスをおこなう際には、定められた基準をクリアした上で、国からの指定を受ける必要がある。

介護施設における看取り介護の流れ

談笑する看護師と患者

老人ホームなどの介護施設における看取り介護は、基本的に下記のような流れに沿っておこなわれます。

1.入居~適応期
2.適応期(1ヶ月後)
3.安定期(半年後)
4.不安定・低下期(衰弱が見られる時期)
5.不安定・低下期(衰弱が進行する時期)
6.看取り期(医師から「回復が望めない」と診断される状態~亡くなるまで)

まず施設への入居時には、病院との連携など施設の医療体制が説明されるとともに、看取り期の対応について本人や家族の要望が確認されます。その後も入居者の状態が安定している間に、看取り期のケアや医療、施設での生活などへの要望が繰り返し書面や聞き取りによって確認され、入居者に衰弱が見られた場合には家族に速やかに容体が伝えられます。

上記の4の時期以降は、随時医師からの容体や経過の予測(回復の見込みなど)についての説明がおこなわれることになりますが、こうした場にも施設の介護職員や介護支援専門員(ケアマネジャー)、生活相談員といったスタッフが同席し、入居者や家族をサポートします。なお老人ホームにおける看取り介護においては、医療機関との連携が不可欠となるため、こうした協力体制が整っていない施設においては、看取り期に老人ホームから病院への移動を求められる場合もあるため注意が必要です。

看取り介護の具体的な内容

入居者に対する看取り介護では下記の3つのケアが中心となります。

・栄養・水分を補給する
介護職員や看護職員が連携し、食事や水分の摂取量や排便・尿の量、体重、むくみの有無などを把握したうえで、入居者の状態に適した方法で栄養や水分の補給をします。また栄養士との連携により、入居者の状態に合わせて工夫した食事のメニューが提供される場合もあります。

・清潔を保つ
入浴やシャワー浴、清拭(身体をふくこと)などにより、可能な限り入居者の身体を清潔に保つようにします。

 ・心身の苦痛をやわらげる
寝たきりなどで姿勢を変えづらい人の場合は、スタッフが楽な体位を保持するなどの介助をおこないます。また医師の指示により、看護職員が鎮痛薬を投与するなど痛みをやわらげる処置をおこなう場合もあります。さらに精神面では、声かけによるコミュニケーションやケアへの要望の聞き取りなどを通して、孤独感や不安をやわらげるサポートもおこないます。

さらに下記のようなケアやサポートも看取り介護の一環としておこなわれます。

・環境の整備
施設での移動や着替え、排泄といった日常行為で入居者がストレスを感じにくいように配慮するほか、入居者の好きな物や自宅で使っていた物を家族に依頼して居室に持ち込んでもらうことなどで安心感を高める工夫をおこないます。

・家族へのケアやサポート
家族に入居者の状態を随時伝えたり、家族からの看取り介護への要望などを聞いたりすることで不安の解消に努めるほか、医師の説明に職員が同席するなどのサポートもおこないます。

・亡くなった後の手続きや処置
医師による死亡確認がおこなわれた後は、遺体の着替えや化粧、傷の手当てといったエンゼルケアが施されるほか、希望があれば家族やほかの入居者たちとともにお別れ会をおこなう施設もあります。また葬儀の手配や入居者が亡くなった後の手続き、家族の精神面のケアなどについても、施設のスタッフがサポートをおこないます。

看取り介護の内容はさまざまという現状も

高齢者の手

内閣府が2012年におこなった「高齢者の健康に関する意識調査」では、65歳以上の高齢者の約半数が「自宅で最期を迎えたい」と希望していることが報告されています。しかし、実際に自宅で看取りをおこなうには、在宅医療や訪問看護、訪問介護などさまざまなサービスを組み合わせる必要があり、介護支援専門員(ケアマネジャー)との協力体制も不可欠となります。

また、たとえ自宅での看取りを決めていたとしても、容体の急変などに家族が対処することは難しく、自宅での看取りには困難な面があるのも事実です。一方、老人ホームにおける看取り介護では、施設のスタッフが本人や家族とともに死を受け入れる準備をしながら、さまざまなケアやサポートをおこなっていくため、入居者や家族が安心して「最期のとき」に備えられる可能性も高くなるといえます。

ただし介護施設で安心して看取り期を迎えるためには、入居者が施設での暮らしに適応していることが重要な条件となります。上に述べた介護報酬加算の見直しなどにより、看取り介護をおこなっている施設は増加していますが、その内容は施設によってさまざまというのも現状です。そのため老人ホームを選ぶ際には、介護や生活支援といったサービスの内容や本人との相性とあわせて、看取り介護の具体的な内容やいざというときの医療体制についても十分に確認しておくことが大切といえるでしょう。

▼参考資料
・在宅医療に係る背景~自宅での死亡の状況など~ 内閣府
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg4/kenko/151224/item2-2-2.pdf

・病院で死なないという選択 看取りに強い特養(特別養護老人ホーム)はこう探せ! 毎日新聞
https://mainichi.jp/sunday/articles/20171113/org/00m/040/007000d

・高齢者の健康に関する意識調査 内閣府(P8「最後を迎えたい場所」)
http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h24/sougou/gaiyo/pdf/kekka_1.pdf

介護エージェント運営事務局