2017年12月20日

【作業療法士(OT)がおこなうリハビリ】老人ホームでの役割や理学療法士との違いは?

アイビー

理学療法士と並び、医療機関や介護施設でのリハビリテーションに携わる専門職として知られる作業療法士

しかし作業療法士の仕事の具体的な内容については、その範囲が幅広いこともあり、一般にはあまり知られていない面もあります。ここでは作業療法士がおこなうリハビリの目的や内容、理学療法士との違いや介護施設での役割などについて解説していきます。

作業療法における「作業」とは

世界作業療法士連盟(WHOT)では、作業療法士(OT:Occupational Therapistの略)がおこなう作業療法について下記のように定義しています。

作業療法とは、作業を通して健康と幸福な生活の推進にかかわる職業である。

作業療法における「作業」という言葉は、仕事や趣味の活動から人間が生きていく上で欠かせない食事や着替え、トイレなどの動作まで幅広い意味を持っています。こうした生活におけるさまざまな作業を通じてリハビリをおこない、身体や精神の障害からの回復や心身機能、運動能力などの維持・改善をサポートしていくのが作業療法士の仕事です。

ちなみに日本作業療法士協会では、下記の3つの能力の維持・改善を作業療法の目標として掲げています。

・基本的動作能力…立つ・座る・歩くといった基本的な動作をおこなう能力や日常生活をおくるうえで必要な知覚・感覚・認知などの機能。
・応用的動作能力…食事やトイレ、入浴や家事など上記の基本的動作から一歩進んだ日常生活に必要な行為をおこなう能力。
・社会的適応能力…地域活動への参加や就労・就学など、社会生活に適応する能力。

作業療法士と理学療法士の違い

調理

作業療法士と理学療法士の最大の違いは、理学療法士がおもに上記のうち基本的動作能力の維持や回復を目的としたリハビリをおこなうのに対し、作業療法士は応用的動作能力や社会的適応能力の維持・改善を目指してリハビリをおこなう点にあります。

たとえば、理学療法士はおもに「筋力が低下している」「関節が動きにくい」といった身体機能・運動能力の衰えや痛みに対してリハビリをおこないますが、作業療法士がおこなうリハビリは、対象者が「食事やトイレの動作」「調理や掃除などの家事」「買い物などの外出」といった生活に必要な行為を自分でおこない、学校や職場、家庭や老人ホームなどの集団や地域社会に適応する能力を維持・回復するサポートに重点を置いています。

また、統合失調症やうつ病といった精神疾患からの回復をサポートするリハビリも作業療法士の重要な仕事です。こうした精神面でのリハビリは、認知症の高齢者や発達障害を持つ児童に対してもおこなわれますが、作業療法を通じた気晴らしや生きがいづくりは高齢者が長期入院した際や、老人ホームで生活をおくる際にも必要な「心のケア」といえるでしょう。

作業療法士と理学療法士の連携によるリハビリも

上記のように作業療法士と理学療法士では、おなじリハビリの専門職とはいえその仕事の目的や内容に大きな違いがありますが、その一方で両者のカバーするリハビリの範囲には基本的動作能力の訓練など重なる部分も多く見られます。そのため医療機関や介護施設では両者が連携して業務にあたるケースもあり、特に体の衰えと認知症などによる認知機能の衰えが同時に進行することも多い高齢者においては、両者の協力体制が効果的なリハビリをおこなうために重要となる場合もあります。

作業療法の具体的な内容は

作業療法では、移動や食事といった日常生活に必要な動作だけでなく、木工・手芸・絵画・園芸などの趣味、書字やパソコンなどの文化活動、ゲームや体操、スポーツなど、あらゆる作業をリハビリの手段として用いていきます。ちなみに高齢者に対する医療や介護の現場でおこなわれる作業療法には下記のようなものがあります。

・機能的作業療法…身体や感覚の機能を維持・改善するための訓練。関節の可動域を広げたり、筋力を増強したりという点は理学療法士がおこなうリハビリと共通しているが、理学療法士がおもに立つ・座る・歩く、といった下肢の動きを中心にリハビリをおこなうのに対し、作業療法では握力や手指の細かな動きなど上肢の動きに対する訓練も重視する。具体的には木工や手芸、箸の操作(小豆つまみなど)や書字といった作業による筋力・関節可動域の訓練や専門的な器具を用いたトレーニングなど。

・日常生活動作訓練…食事や更衣、トイレといった身の回りの動作を、できるだけ自立しておこなえるようにする訓練。また作業療法士が調理などの家事をおこなうための実習リハビリをおこなったり、ケアマネジャー(介護支援専門員)とともに自宅で生活するために必要な住宅改修や福祉機器・福祉用具の利用相談に応じたりする場合もある。

・心理支持的作業療法…趣味の活動やゲームなどを通じて精神面の活動を活性化し、生活意欲の向上や認知症の予防(または進行防止)などを目指すリハビリ。

・自助具・装具の作成…体の機能が十分に回復せず、一人でできない動作がある場合には、対象者の手指などの動きをサポートする自助具や装具を用意する。市販されている自助具・装具にも、筋力が弱っていたり、関節の動きがかたくなっていたり、あるいは片手しか使えなかったりといった高齢者でも使用できるスプーンや箸、爪切りなどさまざまなものがあるが、作業療法士は患者や利用者の状態に応じてオリジナルの自助具や装具の作成・改良もおこなう。

作業療法士によるリハビリを受けるには

看護師

作業療法士は国家資格であり、作業療法士としてリハビリをおこなうには国家試験を受験して厚生労働大臣の免許を受けることが必要となります。

作業療法士がリハビリをおこなう場所としては、まずリハビリテーション科などを設けてリハビリをおこなっている病院やクリニック、診療所といった医療機関があげられます。また介護関連では、要介護の人がリハビリを受けながら日常生活への復帰を目指す介護老人保健施設(老健)が作業療法士のおもな就労場所となっています。有料老人ホームや特別養護老人ホームのなかにも、作業療法士が配置されている施設がありますが、こうした入居型の施設における作業療法は、個別の機能訓練から、集団でのゲームやスポーツなどのレクリエーションまで幅広いものとなっています。

また作業療法士は訪問リハビリテーションにより、患者や利用者の自宅に出向いて、関節や筋肉の機能訓練や起き上がり・歩行・トイレなどの動作訓練をおこなう場合もあります。この訪問リハビリテーション(要支援の人は介護予防訪問リハビリテーション)は、原則として要介護・要支援の認定を受けている人が利用できる介護保険のサービスですが、主治医の指示があれば、こうした認定を受けていない人でも医療保険で訪問リハビリが受けられる場合があります。

介護施設における作業療法士の役割

作業療法士は心身機能や運動能力の維持・回復から社会生活への適応まで多岐にわたるリハビリをおこなう専門職であり、対象となる人の年齢も乳幼児から高齢者まで幅広いものとなっています。作業療法の内容も、専門的な器具を使用した機能訓練、日常動作の訓練、文化活動、趣味活動、ゲーム、レクリエーション、体操、スポーツと多種多様ですが、こうしたさまざまな作業を組み合わせながら、日常生活をおくる能力を維持・回復し、対象者にとって最善と思える生活スタイルを目指していくのが作業療法士によるリハビリといえます。

高齢者の場合、病気や加齢による心身の衰えなどが原因となり、日常生活をおくる意欲が低下してしまうケースも多く見られますが、老人ホームや老健などの介護施設で作業療法士がおこなうリハビリは、単調になりがちな施設での生活に変化や刺激を与え、入居者のQOL(生活の質)を高める意味でも重要なものといえるでしょう。

▼参考資料
・作業療法の定義 一般社団法人 日本作業療法士協会
http://www.jaot.or.jp/international/wfot_definition.html

・作業療法士ってどんな仕事? 一般社団法人 日本作業療法士協会
http://www.jaot.or.jp/ot_job

・作業療法 公益財団法人 長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rehabilitation/sagyou-ryouhou.html

・自助具の紹介 福岡県作業療法協会
https://www.fuku-ot.org/member/jijyogu/

介護エージェント運営事務局